棋書の善し悪し
うちにある棋書(目測200冊以上)を、サークル用に精査しています。
初心者用を中心に、読んでいないのも結構あるので、チェックして良書を厳選したいなと。
棋書は「水もの」でと思っています。
特に顕著なのは定跡書ですかね。
振り飛車側が角交換するのはご法度、だったはずが、今では積極的に交換を狙ってきたりしますしね。
まあでも、プロの最先端の研究を追うことが必ずしも必要では無いので、アイデアとして吸収するのは悪いことではないでしょう。
ただ、中には「そもそも間違い」という本があったりもするので厄介です。
きちんと精査されていない問題集に注意!
まず画像。
作者は伏せますが、元プロ棋士の方が16年前に著した棋書から。
次の一手問題なのですが、ここでは「▲3三歩」が正着だと思います。
△同銀は▲1三歩成で先手勝勢。
△同金は、(1)▲1三歩成△同銀▲同香成△同玉▲2二銀、あるいは控えて(2)▲2六桂もありそうです。
いずれも玉を守る金銀が取れて、先手が勝勢に近い優勢だと思います。
水匠の解析でも▲3三歩が最善で+1900点くらいでした。
体感的には、二段程度あれば▲3三歩は第一感で見えると思います。
が、棋書の正解手は「▲8六角」。
「え、なんで?」という手ですね。。。
角交換がほぼ確実なので、戦力を補充すれば玉の安全度が違いすぎて先手が良いとは思います。
が、角を手持ちにしなくても歩の攻めが刺さるので、角をぶつけるのは、ひと目、筋が悪いと思いました。
水匠は▲8六角で+1000点ほど。
1000点近く下がります。
形勢が開いているので優勢は保ちますが、相手のあまり使えていない角をわざわざ駒台に乗せてあげるのは感覚的には変です。
正解を▲8六角としたのも問題ですが、この棋書では▲3三歩に触れてもいません。
想定している読者は初段前後だと思うのですが、その棋力では本書の解説を「そういうものなのか」と鵜呑みにしてしまう可能性が高いように思います。
「次の一手」不要説
個人的には次の一手問題集は好きです。
実戦ではまず出てこないような鮮烈で気持ちの良い手が用意されているので、脳トレパズルとして楽しいからです。
ただ、棋力アップにはあまり繋がらないだろうなと思っています。
理由としては、次の一手問題自体が解けたとしても、問題に出てくるような罠の局面を実戦で用意できる能力は身に付かないと思うからです。
局面の急所を見抜く力はある程度養える可能性はありますが、それならば将棋世界誌の棋譜を並べるなどした方がずっと有意義だと思います。
月次ですが、やはり詰将棋と定跡書が、本で勉強するのであれば基本なのかなと思います。
時々、指定局面を考えるタイプの本にも良書はあります。
(たとえば森信雄先生の『逃れ将棋』シリーズなどは、一問ずつ盤に並べたいような良問揃いです。)
ただ、パズル的な決め手のある局面の「次の一手」は、上述したようにストレス解消的な使い方になると思います。
そして、難解な局面での感覚を問うような問題では、次善手や3番手の手でも局面をリードできている場合があるので、解説されない変化でも悪くないことがあります。
(上の画像でお見せした問題は論外ですが。。。)
アマチュア棋士に求められるのは、局面を深く掘り下げる能力よりも、短時間で急所に気づける能力だと思います。
そういう意味でも、短手数の詰将棋を反復するような勉強法が良いように思います。